ヒステリー


 「ヒステリー」「ヒステリック」という言葉から何を連想しますか?・・ヒステリーというと、女性が怒りに任せて「キー!」っとなっているイメージがある方もいらっしゃるでしょう。


実は、Wikipediaによると
かつての精神医学において、転換症状と解離症状を主とする精神障害群を指していた語。
一般の人がヒステリーと言う場合、単に短気であることや、興奮・激情により感情が易変し、コントロールが出来なくなる様子のことをさすことが多い。
「ヒステリー」が一般用語として雑多な意味に用いられていることから、現在の精神医学では基本的には「ヒステリー」という用語を使用していない。 (引用:Wikipedia ヒステリー
と書かれています。

以前精神障害群を指す言葉として使用されていたヒステリーは、今では一般的に「あの人はすぐヒステリーを起こす」、「ヒスる」などと使われるようになったんですね。主に感情的に怒った状態を表しています。現在では、そういった意味があやふやになるため精神医学では使用されなくなり、「解離性(転換性)障害(ICD-10 F44)」としてまとめられたようです。

解離性(転換性)障害(ICD-10 F44)とは
基本は、自我同一性、意識、記憶(発達と認知のクラス)が、特別な出来事(インスタンス)に対し割り込みを受け,そのバランスの破綻した状態。 ストレスによって、社会的機能が著しく低下し、日常生活、社会生活などに障害がおき、一般的な社会生活ができなくなってしまいます。身体障害は無いが、情緒・身体・行動面においてある症状を伴って現れるものをいいます。(参考:第24回日本小児科学会,松島レポート2,「解離性障害」,p11 、 第25回日本小児科学会,松島レポートの総括と子どもの未来,「CQ-7考察:さて、子供たちはPTSDなのか?」,p10





◆神経・精神疾患診療マニュアル第142巻・特別号(2),pS299の「解離性(転換性)障害」にて、渡邉俊之さんの記事には、ヒステリーは大きくわけて「転換型」と「解離型」の2タイプがある、と書かれています。

それぞれの現象、病態について、渡邉さんは以下のように述べられています。

解離性障害は、「とりわけ、過去に重大な心的トラウマ(性的虐待や身体的虐待、あるいはネグレクトなど)をかかえこんでいるケースが多い。」とされ、「一方、転換症状とは、読んで字のごとく、いわゆる心理的葛藤が身体症状へと転換されたことである。」(引用:北川泰久ら:神経・精神疾患診療マニュアル,日本医師会,東京,2013,p.S300)

また、解離性障害(解離型ヒステリー)は、
生活史の一部ないし全部を思い出せなくなる解離性健忘、あるいはまた、突然行方をくらませてどこか遠くで発見される解離性遁走(フーグ)、あるいは外界の刺激に対する正常な反応の減弱ないし欠如を呈する解離性昏迷、(中略)また、俗に多重人格といわれている解離性同一性障害もまれならずみられる。

(引用:北川泰久ら:神経・精神疾患診療マニュアル,日本医師会,東京,2013,p.S300)
転換性障害(転換型ヒステリー)に対しては、
解離性の運動障害(失立失歩、失声、ほかさまざまな運動失調や運動麻痺など)、解離性けいれん(心因性非てんかん性発作、いわゆる大ヒステリーの偽発作)、あるいは解離性麻痺(無感覚)および知覚(感覚)脱失(たとえば心因性の聴覚喪失、あるいは視覚障害など)といった感覚障害がある。

(引用:北川泰久ら:神経・精神疾患診療マニュアル,日本医師会,東京,2013,p.S300)


先ほども述べたように、解離型も転換型も、どちらもICD-10では、「F44.解離性(転換性)障害」として一括りとして扱われています。 どちらも解離という概念でまとめられ、こうして解離してしまうのは、トラウマや心的外傷が関係しているとされているようです。

どういった現象を「解離」と呼ぶのでしょうか?
誰にでもある出来事を忘れてしまったりする経験はあると思います。たとえば、Wikipediaによると、「大学等の退屈な講義の最中に空想の世界へ入り込み、チャイムで我にかえる。 小説やゲームに没入して友達が話しかけてもまったく気がつかない。 飲み過ぎた翌朝、昨日のことが全く思い出せない。(引用:Wikipedia 解離 (心理学))」などがあります。
確かに一瞬意識が飛んでいるようなときがありませんか?声をかけられてハッと我にかえるのも、ある意味では解離した意味なんだそうです。しかしこれは病的な解離ではなく正常な範囲とされているようです。


●心の病気という捉え方
転換型、解離型のヒステリーを、心の病気と捉える場合には、催眠による治療を行い心の病だと明らかにしたJ.M.シャルコーや、その後それを学んだフロイトが「ヒステリーは心の葛藤が身体の麻痺なのに転換したもの」と唱え、フロイトの弟子のユングがヒステリーの別の症状とされる「朦朧状態になったり、多重人格になったように見える精神の機能障害」に注目をしたという歴史があるとされています。(参考:Wikipedia 精神分析学キッズメンタルねっと「ヒステリーは女性に多い病気?原因・症状について」



◇解離性障害は女性に多いもの?
現在、カッとなってコントロール出来なくなる状態のことを指すことが多い「ヒステリー」という言葉ですが、かつては精神医学において、転換症状や解離症状などの精神障害群を指していた言葉です。現在どちらも女性の方が多いとされています。

なぜ女性の方が男性よりもなりやすいのでしょうか?
私は、心の問題のほかに、女性には月経もあるので、ホルモンのバランスも関係があるのかなと考えました。

●女性ホルモンの関係?
そこで、「いつも空が見えるから」という個人で経営されているブログサイトを拝見させていただきました。こちらでは、子供の疲労や発達障害、睡眠障害などについて詳しい情報を集められています。
管理人のYuKiさんはご自身が興味を持った本より、解離性障害のひとつである、解離性同一性障害についてご紹介されていました。
解離性同一性障害(以下DIDと略)は多重人格とも呼ばれるものです。Wikipediaによると、解離性障害の中でも「DIDはもっとも重いものであり、切り離した自分の感情や記憶が裏で成長し、あたかもそれ自身がひとつの人格のようになって、一時的、あるいは長期間にわたって表に現れる状態である。」(引用:Wikipedia 解離性同一性障害)とされています。一般の人からすると複数の人格にわかれることや人格が変わるような不思議な現象は、少し理解が難しいものかもしれません。

特に解離性同一性障害(多重人格)は、欧米では9:1(女:男)の比率とされているそうです。理由はさまざまですが、推測ではオキシトシンの過剰な影響によって、相手の心を読みすぎてしまいまうのだそうです。これは男性のアスペルガー症候群とは反対の域にまで至る可能性があるのだとか。(引用・参考:いつも空が見えるから「多重人格の原因がよくわかる7つのたとえ話と治療法-解離性同一性障害(DID)とは何か」 、岡野憲一郎:続解離性障害,岩崎学術出版社,東京,2011)

それに対してYuKiさんは、
現時点では推測に過ぎませんが、「空気が読めない」ことが特徴のアスペルガー症候群は、男性ホルモンの影響が強い状態なので男性に多いのに対し、「空気を読みすぎる」解離性障害は、女性ホルモンの影響が強い状態なので女性がなりやすいのかもしれません。

(引用:いつも空が見えるから「多重人格の原因がよくわかる7つのたとえ話と治療法-解離性同一性障害(DID)とは何か」
と推測しています。

解離性障害の他人に対して自分を合わせようとする傾向があり、人の顔色を見て自分の言動を合わせ、常に空気を読んで周りに合わせようとする人がなりやすいとされています。
YuKiさんも述べられていましたが、「無意識のうちに空気を読む」ということが、「普通に空気を読む」ということと異なっているようです。過去の強いストレスやトラウマ体験により「無意識」に空気を読みすぎるようになってしまっている方が多いのだそうです。別の人格が現れるというのは、演技でも詐病でもないのです。本人にしかわからない本当に耐え難いものなのだと思います。


●幼少期の虐待
公益社団法人 日本精神神経学会による「平島奈津子先生に「解離性障害」を訊く」のページでは、解離性障害は、心的外傷体験や子供時代の主たる養育者からの愛着の問題などが考えられているとありました。自分自身が解離症状に気づいていないことが多いそうです。また、解離性障害はさらにいくつかの疾患に分類されますが、「DIDの大半が幼少期に虐待(特に性的な虐待)を繰り返し受けていると言われており、女性に多いことが知られています。」と平島さんは述べられていました。(参考・引用:公益社団法人 日本精神神経学会ホームページ「平島奈津子先生に『解離性障害』を訊く」

どうやら他の専門家の間でもDIDの原因は児童虐待である考えが強いようで、その中でも性的虐待が特に多いとされているようです。しかし、「いつも空がみえるから」のYuKiさんによると、欧米と日本は原因が異なることがあり、欧米では性的な外傷体験が多く、日本では家庭での親子関係のトラブルによるストレスが多いとも言われているのだそうです。(参考:いつも空が見えるから「多重人格の原因がよくわかる7つのたとえ話と治療法-解離性同一性障害(DID)とは何か」)この問題に関しては、それぞれ考え方によって異なってきそうです。




●脳の構造による捉え方
(これは現在一般に使われている「ヒステリー」に関する情報かと思われます。)

 様々な情報を発信しているHOTNEWSでは、「ヒステリーは一見すると「心の病」のように誤解されやすいですが、その発症原因は脳科学で説明されている。」と紹介していました。

大脳は「左脳(言語を司る部位)」と「右脳(感情・感覚を司る部位)」に分かれています。その2つを繋いでいるのは「脳梁」と呼ばれる太い神経線維の束です。この大きさが男女で大きく異なり、女性の方が脳梁が太い構造になっているそうです。脳内の情報は全て神経線維を通して伝達されるため、この脳梁が太いことによって左脳と右脳の情報交換量が多くなります。これによって女性の脳は、思ったことや感じたことをすぐ言葉に出してしまう構造になっているんだとか・・。つまり左右の脳全体を使い、そのとき脳内では激しく情報交換をしながら会話するそうです。男性に比べ女性の方がおしゃべりに感じてしまうんですね。
頭で処理したことを口にしないと発散できず、精神的にストレスが溜まってしまう、ということのようです。
また、一度頭に血がのぼると、脳内で過剰に情報が行き交うことになり、脳内で情報処理が追いつかずパンク状態になってしまうんだそうです。(参考・引用:HOTNEWS ヒステリーが女性に多い原因とは?

こうして起こるのが、ヒステリー症状やパニック症状、ということですね。確かに大量の仕事が一気にきてそれをすぐに片付けろと言われたら大抵の方はパニックになりますよね。

少し上の話とは離れた内容でしたが、精神医学で使用されていたヒステリーも、一般的に使われるヒステリーも根本的には同じものとして考えてよいのだそうです(方庵院長より)。「心の病気」と誤解されやすい。とありますが、これだけの考えがあるのですから、心の病気、問題とも捉えられるのではないかと思います。しかし脳の構造によって女性が男性よりも脳内での情報交換量が多いというのはとても勉強になりました。キー!となる人がいれば、今脳内での情報がパンパンになってパンク状態になってしまっているのか。と相手にも、自分にも納得出来そうな気がしませんか?




解離性障害とは、自分が自分でない状態になり、それに気づかない状態です。
解離とはある種の心の働き、ヒステリーという病態から見れば、症状形成機序
解離症とは苦悩の主体、真の自我を別の自我へと置き換えることによって(葛藤主体の隠蔽)、結果として心理的葛藤を逃避するものであることがわかる。
真に「解離」と呼べるのは葛藤主体を隠蔽する、つまり無きものとする解離症のみ。
方安院長が中安氏の文献のきもをまとめたものあります。)
ストレスや外傷によって背負った固定概念を、ヒステリーを起こすことによって緊急的に解放しますが、自分を他人としたり忘れたりするという症状が出るのが特徴のようです。



ちなみに、「ヒステリー」とは子宮を意味する言葉なので、女性だけがなる病気と誤解されがちですが男性でも発症するものです。しかし女性の発症が多いとされています。また子どもから大人まで発症するようですが、思春期〜成人期前半にかけて多いようです。



最後に、
 「ヒステリー」は単純なものかと思いきや、調べてみると物凄く奥が深いものでした。ヒステリーについて勉強する前は「解離性障害」と関連していることすら知らなかったため、調べるにつれどんどんとわからないことが出てきてまとめるのがかなり困難でした。ヒステリーやノイローゼといった言葉は今や一般的に本来の意味とは無関係に使用される場合もよく見られます。結構簡単に使われていますよね。
 医学の世界では常に新しいものへと変わっていきます。病名もどんどん増えてきて、一つの疾患の中にさらに事細かに分けられるものもあります。毎回院長に色々疑問を聞きながら行っていますが、似たような症状でも病名が違ったり、ひとつひとつ理解するのにも時間がかかってしまいます。
 心の問題に関するものはかなり幅広く、デリケートな問題が大変多いです。様々な専門家の方やその他心の疾患についてに触れられている方の意見はとても勉強になります。少しでも多くの方にこういった問題を理解してもらえたら嬉しいですね。 
このページに書かれている内容は、文献などを引用、参考にし、研究員として自分の意見も述べたものもありますので、完璧ではないことをお断りしておきます。(くるみ)



方庵院長のちょっとひとこと

「ヒステリー」って昔はよく使ったんだよね。 最近使われなくなったのは、Kuruさんの説明にもあったように、子宮を表すことなどがかんけいするかもね。  けれど、解離性障害なんて言葉を使うとわかりにくいのに、ヒステリーっていうと、なんとなく わかった気になるのはなぜだろう。解離自体は、そんなに病気なんだろうか?っていうか、ほんとに障害なのか? それに、イメージ的にも、解離性障害ってわかりにくいだけじゃなく、小難しい「病気」のイメージになってしまうのは残念。
で、わたしが、よくみんなに言うこと。例えば、Kuruって自分がおもっているKuruだけかな?お母さんが考えるKuruもいるし、友達が思っているKuruもいる。仕事仲間の思っているKuruもいる。私の思っているKuruもだよ。つまり、意識はひとつしかない、自分は自分しかわからない、的な考えの強い人、「人に何がわかる!」的な、自分のことは自分しかわからない、て言うような固定観念をちょっとかえてみると、案外分かりやすい概念だと思うよ。